前回好評だった「デジモン」ビジュアルに関するスペシャルインタビュー。今回は『デジモンゴーストゲーム』『デジモンフロンティア』と2つのアニメシリーズに注目して、2記事連続でお届けいたします!
本記事ではTVアニメ放送から20周年を迎えた『デジモンフロンティア』をピックアップ♪ 周年を記念した多数の描き下ろしビジュアルについて、担当者に制作の裏側をたっぷりと伺ってきました!
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塚原麻子さん:東映アニメーション株式会社 デザインルーム所属
デジモンパートナーズスタッフ:デジモン好き30代
DPスタッフ:2022年4月に始まった20周年イヤーを機に、たくさんの描き下ろしビジュアルで『デジモンフロンティア』のキャラクターたちに再会することができました!塚原さんの制作スタートはどのビジュアルだったのでしょうか?
塚原:4月から特別イベントが開催された「LB POP UP THEATRE」(※現在は「AniBirth(アニバース)」として営業中)のためのビジュアルです。 2021年10月から着手しましたが、当時は『デジモンテイマーズ』のビジュアルも並行して制作していたので、「いよいよ『フロンティア』も周年が始まるな」と気が引き締まりました。
『フロンティア』の主役デジモンたちは、全員等身が高いんですよね。アグモンやガンマモンといった今までのパートナーデジモンたちは可愛らしさを重視していましたが、別の切り口が必要だと思い、改めて『フロンティア』全話を見直しました。チャックモンは可愛らしさ、フェアリモンはしなやかさやキレイさ、他のデジモンたちはカッコよさを引き立てたいと考え、「らしさ」の出るポーズを物語の中から探していきました。
DP:2種のビジュアルは、同時に制作されたのでしょうか?
塚原:子どもたち6人のビジュアルを先に作り、それにリンクさせる方向でデジモンの構図を考えました。例えば、拓也が20周年ということで「ピース(V)」をしていますが、それに合わせる形でアグニモンは拳を突き上げたポーズにしています。みんなデジモンになると若干性格が変わるので、似ていつつもアレンジを加えたポーズにしました。ですが、チャックモンと友樹はそのままですね(笑)。
DP:デジモンたちのビジュアルは後から考えられていたのですね…!
塚原:同じような画角でカッコよくと思っていたのですが、純平は…もうちょっと別のポーズにすれば良かったとも思ってしまいました(笑)。ですが、それぞれのキャラクターならではのポーズをアニメ本編から探して当てはめた結果、個性が出る形に仕上がったと思います。2つのビジュアルのリンク性を意識したグッズも出していただいたので、苦労した甲斐があり嬉しかったです。
DP:グッズ化したときのことも考えながら、制作されるのですか?
塚原:そうなんですよ~! 例えばアクリルスタンドにする場合、縦幅はある程度融通がききますが、横に広がってしまうと商品化が難しくなります。武器を持っていたほうがカッコいいのですが、剣や長い槍などは適度な収まりを考慮しなければならず、その点も苦戦しました。
DP:ブイモンやギルモンとは違った難しさがあるんですね。
塚原:こじんまりしたポーズだとカッコよくなくなってしまうので、塩梅を見極めながら良いポーズを考えるのが大変です。
DP:次に制作されたのが、『フロンティア』と「デジモンパートナーズ」の周年のお祝いを兼ねたビジュアルですね!
塚原:商品化前提と伺い、それこそアクリルスタンドにしやすいまっすぐ立ったようなポーズを考えていました。ですが担当者から、「商品化のしやすさよりキャラクター性を押し出した構図に」と希望があり、現在の動きのある形になりました。持ち物もキャラクターごとに考えたのですが、輝二が花束を持っていることにファンの方々から大きな反応をもらえたのが嬉しかったです。本編を見返していたときから「輝二には花束持ってほしいけど、ちょっと照れちゃうかな~」と思っていたので、共感いただけて良かったです。
DP:よく見ると輝二は照れていますね!
塚原:そうなんです! 照れていて、赤いほっぺ線を少し入れてもらっています! さりげないのに多くの方に気付いてもらえました。泉は意外とご飯をよく食べるからケーキかな、友樹は大きなプレゼントボックスを頭に載せてたら可愛いな、純平は賑やかし役なのでクラッカーを鳴らしてもらおう、輝一には両手いっぱいのプレゼントを抱えてもらおう、風船を差し出しているのは拓也が似合うし拓也らしいな、とキャラクター性を考えて楽しくポーズや小物を決めることができました。
DP:トレードマークともいえる被り物を、みんな取っているのが新鮮でした。
塚原:今回は正装ということで、帽子・バンダナ類は外してもらいました。きちっとした雰囲気も、ファンの方々から評判が高かったので嬉しかったです。泉のオシャレなジャケットスタイルは、一緒に衣装を考えたメンバーが提案してくれました。私はドレスを着てもらおうと考えていたのですが、より調和性や華やかさが出ましたし、泉自身オシャレなので「着こなす泉、流石だな」と完成したビジュアルを見て思いました。純平も、ベスト&リングで留めるタイプのタイと、オシャレでカッコよくなっています。
DP:イベントビジュアルの間に、「デジモンカードゲーム」など玩具関連のイラストも数点作画されていたのですね。
塚原:特に気合いを入れたのは、2022年夏頃から作業していた「Super Complete Selection Animation ディースキャナ」ですね。玩具関連のビジュアルはパッケージに使用することが多く物として残りにくいので、カードという形になり嬉しかったです。
DP:7月から開催された「デジモンフロンティア20周年 ポップアップ in 東京駅」では、花束を持ったビジュアルがお披露目されました!
塚原:こちらはメーカーさんから、衣装イメージと「花束を持たせたい」という要望をもらい作画いたしました。お花の種類はお任せでしたので、私から色合いなど参考資料を作画担当に送ったら、とても素敵な花束に仕上げていただきました。ファンの方からお花とキャラクターの組み合わせで好評をいただき、とてもありがたかったです。
DP:花束はとても大きくて華やかですね。
塚原:いろいろな色合いにとにかく大きな花束で、というテーマでした。他のビジュアルとは雰囲気がガラッと変わり、「デジモン」にはあまりない華やかさと可愛らしさを表現できました。特に友樹の笑顔がとても可愛くなっていますよね。衣装はメーカーさん指定ですが、キャラクターへの理解が深く、それぞれに似合うとてもオシャレなものを選んでくださったなと思いました。
DP:「デジフェス2022」のキービジュアルは、『フロンティア』の子どもたちと、大人になった『デジモンアドベンチャー02』メンバーとが並んでいるのがとても新鮮ですね。
塚原:このビジュアルの依頼が来たとき、身長差があるキャラクターが並ぶことに対して「難しい…」と思ってしまいました。ですが、デジフェスの会場である立川ガーデンプレイスの裏手に広い階段があることを思い出したんです。そこを舞台にすれば、みんなで会場に来た雰囲気を出せるし、座らせるなどの動きで身長差を調整できると思いつきました。服装や持ち物、構図、ポーズ、表情まで私の方で時間をかけて考えたので、作画担当に本当に可愛らしく仕上げてもらい非常に嬉しかったです。
DP:子どもたちの持ち物や衣装にデジモンがいるのが素敵ですね!
塚原:『フロンティア』は子どもたちがデジモンに進化する設定上、デジモンと並び立つことができません。そこで、拓也にTシャツを着せたり、友樹にカバンを背負ってもらったりと、表現の仕方を考えました。実際にグッズ化してほしいという声も拝見したので、頑張って考えた甲斐がありました。
DP:せっかくなので、『02』の話もちょっとだけ聞かせてください!
塚原:『02』メンバーはパートナーと一緒にいて楽しげな雰囲気が出せるよう心がけました。いつもグッズ化を見越してカメラ目線をさせるのですが、「伊織はフェスに来たらパンフレット読み込むかな」等、各キャラの性格を思いながら考えていきました。
DP:その点では、『フロンティア』メンバーにも「らしさ」が感じられますね。
塚原:実は私が描いたラフでは輝二はカメラ目線だったんですが、作画では下を向き、その目線の先に友樹がいたんです! 作画担当が実際に作品を見ており、輝二を含め全員の友樹に対するお兄ちゃん・お姉ちゃん感を知っていたので、自然に表現してくれていました。より良い形になったと思い、見守り目線の輝二そのままで完成品にさせていただきました!
DP:持ち物にデジモンが描かれているという点では、ロフトさんで開催された「デジモンフロンティア 20th Anniversary POP UP STORE」も同様ですね。
塚原:こちらはメーカーさんから「持ち物にデジモンを」という要望を受けて制作しましたが、普段と全然違うテイストになったこと、「デジモン」では珍しい淡い色合いになったことが斬新でしたね。アニメ本編にパジャマパーティーはないのですが、もし現実世界に戻ってきたらこんなこともあるのかなと、想像しながら描いていきました。特に友樹が履いているチャックモンのスリッパが可愛くて…。
DP:みんな本当に可愛らしいですよね…!キャラクターの元々の衣装モチーフを入れ込んでいるのも、メーカーさんからのアイデアだったのでしょうか。
塚原:はい、本当に可愛らしいアイデアでそのまま採用し作画いたしました。例えば、拓也のアイマスクがゴーグルになっているのもメーカーさんからなのですが、拓也らしさもありつつ自然と絵の中に収まるとてもいいアイデアでした。
DP:『フロンティア』のコラボは衣装がバリエーション豊かで楽しいです。
塚原:いつもの服装のほうが少ない印象はありますね(笑)。アニメ本編で衣装違いの展開をしてこなかった作品ですので、ファンの方々にも新鮮に見てもらえたようです。
DP:「周年」の良さかもしれませんね。
塚原:現行作品は「今」まさにファンの方々に知ってもらっている最中なので、同じ衣装での作画が多くなります。ですが、『フロンティア』のキャラクターは20年間ファンの中で生き続けてきた土台があるので、新しいチャレンジができるんです。20年目で新しい側面を出せて嬉しいです。
DP:CDジャケットは、集大成のような印象を受けました!
塚原:そうですね、私が担当した『フロンティア』20周年の作画としては最後のものになります。FEEL MEEさんからいただいたイメージ図がとてもカッコ良かったので、この通り再現しようと気合いを入れて挑みました。ポーズの細かいすり合わせをしつつ作画担当に依頼しました。デジコードの中心にいるデジモンたちに、それを見上げるような子どもたち、トレイルモンと線路に、最終決戦で訪れた月をイメージした背景と、全てが素敵で、塗りやエフェクト含めてリッチに仕上げさせていただきました。時期的には20周年の集大成で、ビジュアル的にも旅の最後をイメージとのことで 、キリッとしつつもどこか爽やかさを感じられる表情を心がけました。何度も進化シーンを見返してデジコードの調整を重ね、光の加減など試行錯誤しました。こんな素敵なCDジャケットを手掛けさせてもらえて光栄で、ファンの方から良い反応もいただけたので本当に嬉しかったです。
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DP:貴重なお話、ありがとうございました!今後の「デジモン」ビジュアルも楽しみでたまりません。
塚原:7月30日に「デジフェス2023」の開催が発表されましたが、こちらも絶賛キービジュアルを作成中です! 実際に販売するデジフェスグッズをキャラクターに着せたり持たせたり…と、見て買って楽しめるビジュアルにしたいと思っています。レイアウトも例年とかなり雰囲気を変えているので、そのあたりも楽しみにしていてください!