前回好評だった「デジモン」ビジュアルに関するスペシャルインタビュー。今回は、『デジモンゴーストゲーム』『デジモンフロンティア』と2つのアニメシリーズに注目して、2記事連続でお届けいたします!
まずは、先日最終回を迎えた『デジモンゴーストゲーム』♪ 放送開始を機に展開された多数の商品やコラボイベントのために描き下ろされたビジュアルについて、熱意やこだわりを担当者にお伺いしました。
放送開始20周年イヤーを走り抜けた『デジモンフロンティア』については次記事でお届けしますので、お楽しみに!
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塚原麻子さん:東映アニメーション株式会社 デザインルーム所属
デジモンパートナーズスタッフ:デジモン好き30代
DPスタッフ:2021年に放送開始したTVアニメ『デジモンゴーストゲーム』のお仕事は、どのビジュアルから始まったのでしょうか?
塚原:作品ロゴのデザインについてプロデューサーからご相談いただいたのが始まりでした。デザイナーさんが文字バランスや配色を決める前段階であるラフ案を、私ともう一人の担当者で考えたんです。
デザイン面では、モチーフとしてガンマモンをロゴの中に忍ばせたいと思い、スカーフや角を入れたバージョンなどを考えた中で、「目」を入れる方向性が選ばれました。カラーについては、ガンマモンの成熟期3体の色を入れたいとプロデューサーから要望があり、今の形に落ち着きました。作品のスタート地点から関わらせてもらったので、とても思い入れがあります。
DP:この色の配置はベテルガンマモンたちのイメージだったんですね。
塚原:色はプロデューサーのこだわりです。モチーフは他作品では具体的に指定されますが、『ゴーストゲーム』では作品やキャラクターの説明はいただいたものの、特に指定がありませんでした。なので、私たちから手書きで複数パターンの案を描いて提案し、そこで確定したラフ案を基にデザイナーさんに形にしていただきました。
DP:ロゴの次はどのようなイラストを手掛けたのでしょうか?
塚原:2023年カレンダーのイラストを、2021年12月からととても早い段階から着手していました。事前に共有される設定やシナリオからキャラクター性を想像するのですが、動く「絵」として見るのは放送されてからになるので、特に登場したばかりの清司郎とジェリーモンに関しては探り探りで形にしていきました。清司郎のリアクション担当のような一面を表現しつつ、そんな彼を面白がっている2人の掛け合いを意識しています。瑠璃とアンゴラモンは、第4話「人形ノ館」でアンゴラモンが瑠璃を運ぶシーンを見て「可愛いから今後もやってほしい!」と願って絵にしたら、ストーリーが進むにつれ定番のようになったので嬉しかったです。宙とガンマモンは、「しっかり者でお兄ちゃんのような宙と、元気で無邪気なガンマモン」という関係性が1話目から完成していました。大輔とブイモンに近い関係値かなとも思ったのですが、今までの「デジモン」シリーズにはない「兄弟」というキーワードがとても良いなと思ったので、表情やポーズなどで表現してみました。初期のタイミングからガッツリ考えられたので、とても楽しかったです。
DP:手探りとは思えないくらいキャラクター性がしっかり捉えられていて、驚きました。
塚原:このイラストに続いて、「デジモンカードゲーム」などのバンダイさん商品のイラスト制作や、GraffArtさんがとても可愛らしく仕上げてくださったデフォルメイラストの監修を行っていました。そちらも是非公式ホームページからご覧ください。
DP:こちらは公式サイトのトップでも使用されている、2022年7月に出た完全体のメインビジュアルですね。カノーヴァイスモンたちが登場しましたね。
塚原:このビジュアルの大ラフ(どのキャラクターをどこに配置して、どんなポーズをとるかなど)の案を描かせていただきました。宣伝担当者の要望で、3人がパートナーと共に、どんどん激しくなっていく大きな事件に立ち向かっていくイメージで作成しています。
DP:ファンの間でも、新しいビジュアルが出るたびに、特に瑠璃など表情が変わっていくと話題になっていました。
塚原:そうですね。瑠璃は最初はにこやかな感じだったのが、戦いを経て凛々しくなっていくイメージです。清司郎は、番組開始時のビジュアルでは怯えて逃げているような姿だったのが、少し成長しておっかなびっくりながらも立ち向かっていく様子が垣間見えるように。宙はストーリーの最初からキリっとしていますが、最初のビジュアルでは驚いている表情だったので、その頃に比べると成長が見えるようにしてみました。こちらも放送中だったので、各デジモンが進化して性格が変わった時にどのような動きをするか、手探りで進めていました。
DP:テティスモンは勇ましいですね。
塚原:手が特徴的だったので、しっかり見せる構図にしようとは思っていたんです。ジェリーモン、テスラジェリーモンはお茶目でやんちゃなイメージなので、大ラフではその延長線上で握りこぶしにしていました。ところが本編を見たら優雅な動きをしていて、完成したメインビジュアルではしっかり手を開いた素敵な形に修正していただけていました。思った以上にたおやかな性格になって驚きましたが、進化してキャラクター性が顕著に変わるのも面白い部分ですよね。
DP:シナリオを読んで、実際の映像を見て、変わった印象はしっかり反映できるようにしていくんですね。
塚原:そうですね。現行作品の難しいところは、キャラクターがどのように成長していくか理解とアップデートを繰り返さないといけないところです。過去作品なら一通りチェックでき、制作しているビジュアルはストーリーのどの段階なのか、理解しながら進行できます。現行作品はビジュアルを作った時点では最新ですが、公開タイミングでは少し前の状態になってしまうので、そこを古く見えないようにするが大変です。
DP:それでいうと、第32話「オマエハ誰ダ」の特別ビジュアルは、ストーリーに合わせた制作ですね。
塚原:「この1話のためだけのビジュアルを作る」と聞いて、宣伝担当者の気合いを感じました(笑)。具体的に「手前に元気なガンマモン、壁のシルエットの顔でコラージュ感を出しつつ、背景も不穏な雰囲気」という依頼を受けて、ガンマモンは元気いっぱいで「可愛さ」を強調しつつ、後ろの影は意地悪な表情で不気味さを出し、「どのようなお話なのかな?」と興味をもってもらえるよう意識しました。大ラフを提出した際、宣伝担当者から「塚原さんの”ガンマモンを泣かせてやろう”という気概が伝わってきた」と言われてしまいました(笑)。
DP:(笑)!
塚原:その話でガンマモンが見舞われる不運を表現したかっただけなのですが…(笑)。その甲斐あってか、作画担当に可愛くも不気味なビジュアルに仕上げていただけて、思い出深い1枚になりました。手前がベツモン、シルエットがガンマモンの逆バージョンもあるのですが、そちらはガンマモンの戸惑いや悲しみが伝わるように意識してラフを作成しました。
DP:1話で2枚のビジュアルが作られるのは珍しいですね。
塚原:他の作品でもほとんどないです。物語の前半はとても苦しい内容でしたが、その分後半の再会の場面は涙がとまらなくて印象深かったです。この話のビジュアルに関われて良かったです。
DP:「オマエハ誰ダ」の放送が7月でしたが、ここから描き下ろしのビジュアルを使用したコラボやイベントが立て続けに実施されましたね。
塚原:そうですね、「セレッソ大阪」さんとのコラボや「AniBirth」でのイベントなどが夏に実施されたので、近いタイミングでビジュアルを制作していました。「AniBirth」は、社内のイベント担当者からいただいた各キャラクターのポーズ指定ほぼそのままで制作に移りましたが、私の方で一部アンゴラモンだけ「前に走っているイメージで」と提案しました。両足を上げてジャンプしていたポーズ指定に対して、他のキャラクターと画角を合わせるため調整が必要だったのです。
このビジュアルを使用したグッズはたくさん展開されましたが、『ゴーストゲーム』のグッズ種類がここまで少なかったこともあり、嬉しくて私も実際に店舗に行って購入してしまいました。色味を抑えつつイラストが映える大人でも使いやすいグッズで、特に手ぬぐいはオシャレな仕上りになっていました。
©CEREZO OSAKA
塚原:「セレッソ大阪」さんとのコラボは、ポーズのご提案をいただいたものを、私の方でユニフォームの着せ方などを調整しながら全体をまとめていきました。先方とご相談の上、キャラクターの魅力をより引き出すために、子どもたちだけでなく、デジモンたちにもユニフォームを着てもらうことになりました。
DP:とても似合っていますよね!
塚原:似合いますよね! 特にジェリーモンが、体のカラーリングとユニフォームの色の相性がすごく良く、可愛いイラストになりました。元気いっぱいなガンマモンや、手袋をしてゴールキーパーをするアンゴラモンなど、みんなとても相性が良かったです。
DP:普段と装いと雰囲気が全然違うので、見ていて楽しいです。
塚原:これまで衣装違いのイラストはあまりなかったですからね。宙はサッカーできそう、だけど清司郎や瑠璃はできなさそう、デジモンたちはルールは知らずにボールで遊んでいるだけかなと色々考えながらも、とにかくみんなでワイワイ楽しんでいる感じが出せたらなと取り組んでいました。
塚原:2023年のトピックスとしては「AnimeJapan2023」のキービジュアルがあります。作画依頼をいただいたタイミングで「デジヴァイス」が新しくなると伺い、このビジュアルから変更になりました。
DP:多種多様なキャラクターと一緒に走っているのが印象的でした。初めて他のキャラクターと一緒に走る完成版を見たのはいつなのでしょうか?
塚原:一般公開されたタイミングです。そうそうたるキャラクターたちの中に、良い位置で宙を入れてもらえて嬉しい気持ちでした。あと全体を見渡して、中学生だし等身も低いので可愛らしいなと思いつつ、小柄なのでビジュアル全体の良い位置に配置してもらえたのかなとも思っていました(笑)。東映アニメーションの今年の「顔」として選出されたので、誇らしい気持ちでしたね(笑)。
DP:このビジュアルは、どのようなこだわりで制作されたのでしょうか?
塚原:グッズ用の描き下ろしは多くなかったので、これに関しては私からガッツリ考えて提案させていただきました。「エンディングのお茶会」シーンというメーカーさんの要望を受け、イースターを混ぜて春らしく仕上げてみました。それぞれのタキシードやエプロンドレスはパートナーの色合いで、リンクする意識で衣装を用意しています。ケーキなどの食べ物は、作画担当に「キャラクターモチーフで可愛くご飯を描いて下さい」とお願いしたら進化形態のデジモンたちにしてくれたんです。私のラフだと普通のサンドイッチだったんですが、こんなに可愛く豪華にしてもらえて感動しました! 素晴らしいアレンジでした。
DP:描き込みがすごくて思わず声が出ました! あと、帽子にアクセントで幼年期デジモンのモチーフが入っているのがニクイですね。
塚原:アニメ本編には登場していないのですが、「バイタルブレス」では育成できるので、遊んでもらっている方に気がついてもらえたら嬉しいと思って入れてみました。幼年期たちは本当に可愛いくてどこかで描けたらいいなとずっと狙っていたので、「デザイン」の一部として入れさせていただきました。
DP:そのような点も含めて、とても気合いを感じました。
塚原:『ゴーストゲーム』では珍しいグッズオリジナル衣装の作画だったので、「私が一番欲しいものにしちゃおう!」「可愛い作画にしよう!」と意気込んで取り組んでいました(笑)。GraffArtさん側では、完全体デジモンたちを中心に別のデフォルメイラストも作成してらっしゃるのですが、このイラストでもたくさんグッズ化してもらったので、私も絶対にショップに足を運びたいと思っています。ファンの方たちの反応がとても楽しみです…!
DP:ずっと見ていても飽きないビジュアルです!
塚原:甘いものを食べたときに瞳が変わるガンマモンは、なんとかグッズにして残したいと思っていたので、チョコケーキを頬張る姿にしてみました。パートナー同士のお揃い感もよく、春らしさもでているので、ぜひ『ゴーストゲーム』の思い出を残すためにもショップに来ていただけるとありがたいです。
DP:貴重なお話、ありがとうございました!
次の記事も引き続き、塚原さんにインタビュー!『デジモンフロンティア』編をお楽しみに♪